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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)3177号 決定 1951年5月10日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人山内忠好の上告趣意第一点について。

論旨は控訴を棄却した原判決は有罪の判決をなすものであるから、証拠の標目を掲げていないのは、刑訴三三五条、三九四条、四〇四条に違反し、従って憲法三一条に違反するというのであるから、名を憲法違反に藉りてその実訴訟違反を主張するに帰し、刑訴四〇五条所定の上告適法の事由にあたらない。そして原判決は事実誤認量刑不当の控訴趣意は、いずれも、第一審の取調べた証拠及び訴訟記録によってとるをえないものであるとして刑訴三九六条により控訴棄却の判決をしたものであるから、所論刑訴四〇四条の「この法律に特別の定のある場合」に属し、従って、所論刑訴三三五条の準用のない筋合であるといわなければならぬ。されば論旨は訴訟法違反の主張としてもとるをえないから、刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第二、三点について。

論旨第二点は原審は証人岡田ふじに対する尋問調書中の不可分の供述の一部を分離してその供述全体の趣旨と異る意味において事実認定の資料とした違法あるもので論旨指摘の当裁判所の判例に反するというのであり、論旨第三点は原判決は被害者の公判廷における供述調書をその趣旨に反して証拠に採用した違法あるもので論旨指摘の当裁判所の判例に反するというのである。しかし原判決は被告人が岡田ふじを強姦し傷害を与えた旨の第一審の判示事実はその挙示する各証拠を綜合してこれを推認するに十分であって、和姦であるとの控訴趣意は到底首肯し難い旨判示しているのであって、もとより所論のような採証の違法はなく、従って原判決には論旨に指摘する当裁判所の各判例に反する事実上、法律上の判断を示していないのであるから、論旨はいずれもその前提を欠き、名を判例違反に藉りてその実原判決の是認した第一審判決の適法な事実認定を非難するに帰し明らかに刑訴四〇五条所定の上告理由にあたらないし、また、四一一条を適用すべきものとも認められない。

よって刑訴四一四条三八六条一項三号一八一条一項に従い全裁判官一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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